私が学びたいことがここにある

研修医と同等の実習をした贅沢な3ヶ月。長期滞在型臨床実習で私が目指す医師像が明確になった

リアルに実践的に、全身で学びを吸収する3ヶ月

私は6年生に進級する前の2月から4月まで、長期滞在型臨床実習(以下、LIC)に参加しました。このプログラムは、地域に溶け込んで、学生でありながら研修医と同じくらい、問診や診療、採血などの手技も経験することができる機会。3ヶ月間という期間を同じ病院で研修することによって、急性期の患者さんの回復過程を診ることができるのも、この実習の魅力です。

お世話になったのは、新潟県の南魚沼市民病院。特別養護老人ホームとの医療提携や、AIを活用し地域の医師不足を補いながら地域の人たちの健康を支える健診施設の設立など、新しいことに挑戦している姿勢にも興味を持ち、この病院を希望しました。

実習内容は、大学病院での実習よりも実践的な内容。指導医の先生のご指導のもと、問診から診察、カルテ記入や処方オーダーの作成までの一連の流れを主体的に行った経験により、医師として働く将来像が一層具体的になりました。特に処方入力においては、指導医や薬剤師の方々からの確認や指摘を通して、医療安全の重要性と医学知識への理解をより深めることができました。また、訪問診療の同行や特別養護老人ホームへの往診で患者様のお看取りを経験し、医師の役割は「生きている人」に向き合うことにとどまらないのだと学びました。

「先生」と頼られる環境で知る、教科書通りにいかない難しさ

実習中は、学生の私も患者さんからひとりの医師として見られます。そして、先生や職員のみなさんも、研修医と同じように扱ってくださいます。だからこそ、自分の言動にも緊張感や責任感が生まれました。「先生」と頼って、血液検査の数値や薬の効果など、さまざまな質問をしてくださる患者さんも多く、それに応えたい一心で勉強にも力が入りました。

外来では、限られた時間の中でより多くの情報を聞き出すことと、わかりやすく説明することの難しさに直面しました。最初は、簡潔に話すことができなかったのですが、指導医の先生がどうやって説明しているかを観察し、それを真似て「ひとつめは……、ふたつめは……」と順序立てた話し方を取り入れると、患者さんが「理解できている」という表情を見せてくれるようになり、伝わるように意識して話すことの大切さを実感しました。

毎日いろいろな患者さんを診ていると、一人ひとり病状はもちろん、改善のスピードも薬の効き方もそれぞれ。医療のリアルは、教科書通りにいかないことの方が多いですし、それだけ選択肢があると知りました。3ヶ月間、さまざまな患者さんと向き合う中で、机上の勉強と医療現場で働くことは地続きではありつつも、明らかにちがいます。学生のうちにそれに気づけたことは、大きいと思います。

具体的に見えてきた、医師のビジョンと学ぶべきこと

LICを経て、学びの姿勢も大きく変わったような気がしています。

ひとつは、全身を診ることができる基礎力への意識です。大学病院では疾患によって専門診療科で診ることが多いですが、地方ではお年寄りが多いこともあり、いろいろな疾患を抱えている方が少なくありません。不調の原因が一箇所だけではない可能性もあるため、多角的な広い視野で全体を診る必要があります。疾患ではなくひとりの人を診る、という意識で患者さんと向き合いたいとあらためて思ったのは、この3ヶ月があったからです。

もうひとつは、積極性です。大学では与えられた課題に取り組んだり、先生に言われたことをやったり、受け身の学びになりがちでした。しかし、LICでは待っているだけだと時間は過ぎていくばかり。興味のあることや見てみたいものをきちんと伝えたからこそ、オペの見学や縫合など、貴重な体験もすることができました。そして、こういうことがやってみたいなど具体的な要望も生まれ、学びを掴みにいくスタンスへと変化しました。

LICは、責任ややりがいも含めて、医師になることへのイメージをより鮮明に持つことができた期間でした。思い切ってこのプログラムに参加した経験も、このような実習の選択肢がある環境で学べている大学生活も、これからの励みと自信に繋がると確信しています。

※記事内容は取材当時のものです。