私が学びたいことがここにある

「医師になること」と「医師免許を取ること」は全く別物。
沖縄県立中部病院の実習で目が覚めた。

若手医師が活躍する現場で刺激を受ける日々

私は、2026年からスタートした沖縄中部病院での臨床実習に、1期生として参加しました。1ヶ月にわたりひとつの病院で実習ができるということ、総合内科での実習が叶うこと、そして、母のルーツであり将来の拠点としても考えている沖縄の地で学べることも決め手となり、実習のガイダンスを受けてすぐに参加を決めました。

沖縄県立中部病院で処方や採血などの病棟業務の大部分を行っているのは1年目と2年目の初期研修医。お世話になった総合内科も2年目の先生が担当医となり、それを1年目の先生がサポートをする体制でした。自分とそんなに変わらない年齢の若手の医師たちが、臨床現場で活躍している姿は非常に刺激的で、早く追いつけるように頑張ろうと気持ちも引き締まりました。

実習は、主に1年目の医師が担当している内容に取り組みました。午前中は新規の患者さんの問診や身体診察、チームカンファレンスへの参加、患者さんの変化や回復の報告と治療に関するディスカッションをして、回診まで。午後からは、新規患者さんの対応や他の診療科と一緒に診察をする対診、カルテの作成や病棟での臨床手技の実践など。毎日、朝から夜までがあっという間です。医師の動きを“点”ではなく1日の流れの中で体験し、スピード感も含めてリアルに知ることができました。

鑑別疾患で鍛えられた医師の思考プロセス

この期間で最も鍛えられたのは、鑑別疾患を想起すること。新規の患者さんの問診や身体所見をもとに、どんな疾患の可能性があるか、考えうるものをすべて洗い出し、カンファレンスでプレゼンをします。この“すべて”という点が、非常に難しいところです。絞り出すように、可能性の低い疾患も上げていくのは容易なことではありませんでした。

指導してくださる先生は、決して、わかりやすいヒントや答えを言ってくださいません。いくつか挙げた時点でこれで全部かを問われ、数年前に来院歴がある患者さんの場合は、その時の記録を確認しているかを聞かれました。病歴や身体所見、バイタル(脈拍、血圧、呼吸、体温)を診て一旦、考えうる疾患を挙げ、さらには血液検査の結果を見て、さらに追加で疾患を挙げたり、逆に鑑別疾患を減らしたり。そんなふうに、時間をかけて徹底的に考えさせるスタンスで厳しく指導をしていただいたおかげで、医師の思考プロセスが自分の中にインストールされた気がします。

国家試験の問題を解くのと、現場で疾患を探っていくのは、考え方がまったくちがうとわかったのも、今回の実習での大きな気づきです。実際の診療では、Aの場合はBのようなパターンは一切通用しません。もちろん、国試では時間が限られているので、今回の実習のように時間をかけてじっくり考えることはできませんが、今回、現場で鑑別疾患をじっくり考え、挙げる経験をできたことで、問題を解くだけの小手先のテクニックに頼るのではなく、一人ひとりの患者さんの状態をしっかりと診てそれに合わせて疾患を考えるという意識に変わりました。

疾患だけでなく「人を診る」ことの意味を知った

今回の実習で印象的だったのは、患者さんの暮らし方や生活自立の度合いによって治療や目指す先は異なるということ。退院がゴールではなく、その後の暮らしを見据えて方針を考えることが大切だということを知りました。そのためには、問診の段階で、普段の暮らしぶりをどれだけ詳しく聞けるかが肝になります。そのためには、聞き方にも工夫が必要だと指導医から助言をもらい、対話やヒアリングの仕方にも興味が湧いています。

チームの一員として毎朝病棟に足を運んで、担当している患者さんに声をかけたり、「今日はごはんの器を空っぽにしましょう!」「リハビリがんばりましょう!」と励ましたり。コミュニケーションを取るなかで、逆に患者さんから元気をもらうような感覚も味わうことができました。大学病院の実習では、同じ患者さんのところに連日足を運ぶ機会は少ないので、今回、患者さんの病状の変化や回復していく様を間近で見て、退院を見届けるという体験ができたことで、患者さんの身体だけでなく心もケアするという医師の仕事に、あらためて魅力を感じました。

これまでの勉強の積み重ねで「わかっている」と思っていたものは、現場でそのまま通用しないことを実感し、根拠のない自信が大きく崩れた1ヶ月でした。しかし、既に現場で働いている医師と同じようにチームの一員として扱っていただけるこの経験を、学生のうちにできて本当によかったと思っています。そこからさらに勉強への向き合い方やモチベーションが変わりました。ここからまだまだやらないと!という気持ちで、以前にも増して意欲に燃えています。

※記事内容は取材当時のものです。