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東京医科大学|横山詩子 主任教授|病気を知るために器官の成り立ちを研究する。 それが再生治療のヒントになる。

Utako

Yokoyama

細胞生理学分野
横山詩子 主任教授

病気を知るために器官の成り立ちを研究する。 それが再生治療のヒントになる。

  • 2025.12.23
  • 教授・研究室
東京医科大学|横山詩子 主任教授

PROFILE

横山詩子 主任教授|細胞生理学分野

岡山大学医学部卒業。医学博士。小児や循環器の専門医として臨床に現場に立ち、並行して研究も始める。国内の大学病院でキャリアを積みながら途中カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部薬理学博士研究員も経験。2023年 日本小児循環器学会・高尾賞を受賞。休日は、家族とハイキングやキャンプに出かけるのが好き。

なぜだろう?というひっかかりを起点に想像を広げて

私の主な研究テーマは、「血管」です。

もともと小児科と循環器の専門医として臨床の現場に立っていたので、生まれつき血管の病気がある子どもをたくさん目にしていました。そのような経験や助けたいという思いも研究テーマに辿り着いたきっかけのひとつです。

大きな研究成果を挙げることができたのが、出生時に新生児の身体に起こる動脈管の循環適応についての研究でした。

胎児期に水中生活をしている赤ちゃんは、出生した瞬間に自分で取り入れた酸素で呼吸をしはじめるわけですが、この時に閉じる血管がふたつ、心臓に閉じる穴がひとつ存在します。この閉じるはずの血管(動脈管と静脈管)や穴がうまく塞がらないことで、生まれてから命を落としてしまう子どもも少なくありません。なぜ生まれた瞬間に血管を塞ぐことができるのか、そしてなぜ塞がらないという事態が起きるのか。この疑問を解決するために、仕組みや影響している要素、そして胎児期にどのような準備がされているのかを知りたかったのです。

胎児期は、お母さんの胎盤から分泌されるホルモンの影響によって、血管のうちの動脈管が拡張されることがわかっています。胎盤からの影響と考えれば、生まれた瞬間に血管が閉じるというのは想像できるのですが、ノックアウトマウス(特定の遺伝子の機能や、その遺伝子が関わる病気のメカニズムを調べるために広く使われるモデル動物)を使った過去の研究で血管が閉じないまま死んでしまった例があったことを論文で読み、なぜ拡張を促すホルモンが絶たれたのに閉じなかったのかが不思議で、論文の図を見ながらずっと考えていました。すると、胎児期と出生後では血管の壁が厚く変化していることに気がついたのです。そして、ホルモンが動脈管を拡張しているだけではなく、徐々に血管の壁の構造を変えていくことで出生後に備え、拡張がなくなったときに、少しの縮小で閉じるということがわかりました。

この発見は、出生後の循環適応についての新たな分子機序を明らかにしたとして、米国新生児生理学の教科書(Fetal and neonatal physiology 6th edition, Elsevier)に掲載されています。論文の発表からは10年ほど時間が経っていましたが、やっとアメリカでも認めてもらえたようで、とても嬉しかったですね。

病を解明するためには、まず正常な成り立ちを理解する

私の研究は、まず組織や器官が”正常にできあがる仕組み“を理解するというところを大切にしています。それは、成り立ちと病気は切っても切り離せない裏表の関係にあるから。そう思えるようになったのは学部学生時代のこと。当時授業担当の外科の先生が心臓の奇形について研究をされていて、同じ臓器形成の過程のどこで成長が止まったかによって、病名が変わるということを教わりました。それが、病気を解明するためには、臓器の成り立ちを理解することが大切だと思うようになったきっかけです。

大学卒業後は、全身を診ることに魅力を感じて小児科医として臨床に進みました。診療をしながら、心電図ひとつ見ても心臓の形や発達の様子、遺伝子の異常はどうかなど、いくらでも議論ができる現場だったので、ガイドラインを超えて考えることや身体の原理を理解することが、いかに大事でおもしろいことなのかを体験することができた日々でした。

そして、卒業して10年ほどが経ってその先を考えはじめた頃、タイミングよく基礎研究者として渡米していた小児科医で循環器の専門だった先輩が帰国。「研究の講演があるからよかったらどうぞ」と誘ってくださったのです。

軽い気持ちで足を運んだその講演会は、内容的には難しかったのですが、なにか新しいものを見つけられる、ということのおもしろさを目の当たりにした気分で、その場で「研究経験はないのですが、なにかやりたいです!」と先輩に伝えたのを覚えています。循環器を専門としている共通項もあったので、「血管の発達について研究をしてみませんか?」と受け入れていただきました。これが、私の研究人生のはじまりです。

そこから、アメリカへの研究留学にも行き、2008年に帰国した後も引き続きラボでのスタッフとして研究を続けました。ちょうど子育ての時期とも重なり、自分のキャリアを前向きに考えて選んだ道でもありますが、臨床とはひと味ちがう研究のおもしろさにどんどんのめり込んでいきました。

研究は自由でおもしろく、どこへでも連れて行ってくれる

研究には、「誰も知らなかった仕組みを最初に発見できるかもしれない」という他のことでは代え難い心躍るような知的興奮があります。自分の頭の中で発想を広げて仮説を立て、検証の方法を自由に組み立てることができます。そして、その論文を発表すれば、世界中から反響をいただくこともありますし、いろいろな人と繋がるきっかけにもなります。新しい成果がいろいろな場所に連れて行ってくれる。そういう意味では、研究はどこにでも行けるパスポートみたいなものではないでしょうか。

生まれてからどんなふうに子どもが成長するのかを10年ほど臨床の現場で見ていたおかげで、人の身体の成り立ちをよりリアルにイメージすることができました。だからこそ、実感を持ちながら仮説を立てることができたのだと思います。リアリティを持っているからアイデアを発揮できるのは、私の強みのひとつ。今でも週に1回は診療をしていますし、臨床は昔から変わらずに好きなので、ほとんどの時間を研究に注いでいる今も、臨床は私のすぐ側にあります。臨床で育まれた関心領域や経験している分野が、さらなる好奇心へと誘ってくれた先に、研究という新たな扉が寛容に開かれていた、ということだと思います。

現在は、血管を再生するきっかけとなるような人工血管を作るべく、研究を進めています。それもまた、血管が作られるプロセスが大きなヒントとなり、赤ちゃんの臍の緒から採った細胞を血管の組織にするなど、さまざまな実験を続けているところです。

昨今はその研究の広げ方として、ロボットの機械工学の先生や高分子化学の先生など、異分野の研究者にも力を借り、循環器の構造や環境を再現する装置を開発しました。独自性のあるアイデアと最先端の技術、そこに異分野とのタッグなど新しいものをいくつか集めて研究に臨むと、自ずと新しいものが見えてくるもの。それがまた、新たな知的好奇心を掻き立てるのです。

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