研究にチャレンジすることで手に入れた、 パズルを解くような快感と目指したい医師の姿。
症例数の多い都心の大学病院で学べるよさ
医師になりたいと意識するようになったのは、小学校にあがる頃。母が持病を患っていたので、通院に付き添ったり救急車で運ばれるのを目にしたりと、子どもの頃から病院との接点が多くありました。
そして、幼い私のことも気にかけてくださる母の担当医の先生を見て、自然とあんな大人になりたいと憧れを抱くようになりました。また中学生の頃、祖父が心筋梗塞で倒れ、心臓血管外科の名医として名も知られる方にバイパス手術をしていただいたのですが、患者に対しても家族に対しても親身に向き合ってくださる先生のご対応に救われた経験で、より強く医師を目指したいとより思うようになりました。
東京医科大学を志望した理由のひとつは、都心にあるという立地があります。東京は人口が多い分、症例数も膨大。学生のうちにできるだけ多く、さまざまなケースを目にする環境に身を置くことが、広く深く学ぶことに繋がると考えました。
芽生えた好奇心を「研究」で追求できた
3年から臨床を学び進める中で、製薬や医療機器の開発ベースも基礎医学にあることを知り、1、2年で学んだ基礎医学の重要性をより一層感じるようになりました。そして同時に、新たな技術や機器などが生み出されるための基礎医学を基盤とした研究プロセスにも興味が膨らんでいました。
4年になるタイミングで「リサーチ・コース」が開設されたことで、研究室への門戸が開かれた感覚があり、生理学の分野で研究を進める横山先生の研究室を訪ねたことで、研究への一歩を踏み出しました。
研究していたのは、へその緒の細胞から作る人工血管について。横山先生をはじめ研究室の先生と相談しながら、4年の1年間はさまざまな実験をしてデータを集めることに時間を費やし、5年の1年間はデータから導き出した考察をまとめ学会発表の準備に仕上げる作業に没頭しました。
6年は国試の勉強で忙しくなることはわかっていたので、この2年でできるだけ形にできるように、早起きをして午前中にオンラインの授業を受け、午後から研究室に行くなど、研究の時間を十分確保できるように工夫していました。
研究を通じて身につけた計画力と考察力
研究は、まず自分なりの仮説を立て、それを検証するために数々の実験を行います。そして、出た結果に対して再度考察をまとめ、次の実験の計画を立てていきます。
臨床の現場でも、患者さんの治療を考える時、まずは論文やエビデンスを探して考察し、そこから治療の道筋を決めて実践しながら、その経過を見つめて次のアプローチを考えていきます。
それぞれの進め方に着目すると、研究と臨床は非常に近いプロセスを踏んでいることに気づきます。将来、さまざまな患者さんと向き合う時に必要なプロセスや頭の使い方を、学生のうちに経験することができたのは、研究をやっていてよかったことのひとつです。
大学が設けてくれた「リサーチ・コース」のおかげで、学びの門戸がぐっと広がり、興味もさらに深くなりました。大学入学前に将来の姿として思い描いていたのは、地域に根ざした〝町のお医者さん〟でしたが、大学や大学病院の研修で最新医療にも触れ、研究にも挑戦したことで、まずは最先端の治療によってより多くの患者さんを治癒することができる医師を目指したいと思うようになりました。
臨床の現場で力を付けたいと思っていますが、いずれはまた研究を再開し、そこで得たものを再び臨床に生かせるような医師になりたいです。