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東京医科大学|黒田 雅彦 主任教授|AIを使った病理診断。不治の病への挑戦。<br> 医療イノベーションを最前線で推し進める。

Masahiko

Kuroda

分子病理学分野
黒田 雅彦 主任教授

AIを使った病理診断。不治の病への挑戦。
医療イノベーションを最前線で推し進める。

  • 2025.12.23
  • 教授・研究室
東京医科大学|黒田 雅彦 主任教授

PROFILE

黒田 雅彦 主任教授|分子病理学分野

東京医科大学卒業後、東京大学大学院を修了。医学博士。New York University(NYU), Skirball Instituteに癌遺伝子研究のため留学。核酸医薬品開発、細胞外小胞研究、人工知能AIを用いた癌の再発予測、遺伝子診療など、300以上の論文を発表している。趣味はスキーと、学生時代にクラブ活動で取り組んでいたアメリカンフットボールの試合観戦(NFL)です。

基礎医学と臨床を横断する研究で治療の革新を目指す

私は今、いくつかの研究を並行して進めています。ひとつは、約25年前から取り組んでいるAI(人工知能)を使った病理診断です。病理画像からより多くの情報を引き出せないかと考えたのが、この研究の始まりでした。

当初と比べると、テクノロジーは大きく進化しました。テキスト情報を基盤にしたAI診断は、すでに人間の知見を超えつつありますが、画像診断の精度はまだ発展途上です。今後、GPU(画像処理装置)がさらに進化し、画像解析に強い生成AIが登場すれば、テキスト以外の情報も知見として蓄積され、瞬時に診断できる時代が来るでしょう。家庭である程度の診断が可能になるのも、そう遠い未来ではないと思います。そのとき、医師の役割自体が今とは大きく変わるかもしれません。

もうひとつは、2000年頃から続けている、エクソソーム(細胞外小胞、EV)を使ったsiRNAなどの核酸医薬の開発です。核酸医薬は近年注目されているモダリティ ※1のひとつで、遺伝子治療やCAR-T細胞療法のように、これまで治療が難しかった病気に新たな可能性をもたらす革新的な領域です。

この研究のポイントは、治療効果を持つRNAが体内で速やかに分解されてしまうため、いかに安定的にRNAを送達するかという課題です。製薬企業を含め、多くの研究者が20年以上試行錯誤を重ねてきましたが、私たちは細胞間情報伝達を担うエクソソームに核酸を内包させる方法を考えました。さらに現在は、植物(アセロラ)由来のエクソソームを使うことで、動物細胞由来エクソソームの免疫原性という問題を解決しています。この医薬品開発はAMED ※2の支援を受け、2年後の臨床試験開始を目指しています。長い年月を経て、ようやく臨床試験が視野に入ってきた段階です。

私の研究領域は、基礎医学と臨床の中間に位置します。テーマは多岐にわたりますが、「多くの人の命を救う医療イノベーションを目指す」という点で一貫しており、バラバラな研究をしているという意識はありません。

※1 超音波やMRI、X線、CTなど、治療に用いる手法
※2 2015年に設立された日本の医療分野の研究開発を推進する中核機関「国立研究開発法人日本医療研究開発機構」の略称

不治の病に治療の可能性をもたらす意義

研究に興味を持ったのは、東京大学での大学院時代から東京大学医科学研究所を経てニューヨーク大学に留学した期間中のことです。大学生の頃は臨床医になるつもりで、研究者になるとは全く思っていませんでした。しかし、アメリカでの留学期間中にボストンエリアでのスタートアップの医薬品開発や間近でバイオサイエンスのダイナミズムに触れ、多くの人を救うことができる研究の力に魅了されました。

研究の醍醐味は、未解決の医療ニーズに挑戦できることです。かつて白血病は治療困難な疾患でしたが、新薬の登場で状況は一変しました。肺がんも、従来は殺細胞剤しかありませんでしたが、特定の遺伝子を標的とする分子標的薬の開発により、患者さんの生存期間を延ばすことが可能になりました。医療は少しずつ進化していますが、依然として解決できていない疾患は多く、研究に終わりはありません。

研究は、説明できない現象に対して仮説を立てることから始まります。柔軟な思考と豊かな想像力、そしてやり遂げる強い意志を持つ研究者こそ、大きなブレイクスルーを生み出します。ひとつの研究が成果を結ぶまでには長い時間がかかりますが、実験で興味深い結果が得られたり、理論が正しいと確認できる瞬間が日々訪れたりすることが、研究者のモチベーションになります。私自身もそうですが、研究を仕事というより趣味のように捉え、夢中で続けている人は多いでしょう。わずかな光を見失わず、信念と情熱を持ち続ける人こそ、真の研究者だと思います。

海外経験を通じて感じた、日本で研究する良さ

祖父も父も医師だったため、少なからず影響は受けています。しかし、大学卒業後は日本で開業するより、医療が最も進んだ米国で研鑽を積みたいと考えていました。留学先の米国で研究を続けるつもりでしたが、縁あって病理医として日本に戻り、そのまま臨床と研究に携わっています。大学に所属したことで学生教育にも関われたのは、日本ならではの経験でした。

臨床と研究を両立できるのは、日本の医療の強みです。米国では収入面の差もあり、両方を行う医師はほとんどいません。臨床現場で患者さんを診療し、症例を目にするからこそ、研究に活かせる視点があります。臨床と研究の両方を理解することは、相互に大きな価値をもたらします。この日本の良さを、学生の皆さんにも知ってほしいと思います。

医療の世界は時代とともに多様化しています。卒業後の進路も、臨床医だけでなく、研究者や両方を兼ねる人、さらにはスタートアップを立ち上げる人もいます。だからこそ、学生時代に広い世界を見て、さまざまな経験を積むことが重要です。ぜひ外に出て、多様な人と出会い、想像力と感受性を育んでください。

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